誰だっていいんでしょ?
できなかったことが、できるようになると嬉しい。
できなかったことでも、考えながら、どこが原因か探ることは、探しているうちはイライラするし、もどかしいけれど、できるようになってからは、どれも必要な失敗に思えるから不思議だ。
いつもと同じ電車。同じ車両。同じ位置。
でものぞく窓を変えれば、景色は全く違う。
当たり前のことだけれど、こんなことに感動していたら可笑しいだろうか。
終わってみたら、あっという間の1日だった。
帰りのバス停で、
彼氏とおぼしき人物が、
彼女とおぼしき人物に、
「どうせ誰だっていいんでしょ?」
と言い放たれていた。
言いたいことを言った彼女は立ち去り、
彼氏は僕とバスに乗り込んだ。
「誰でもいいわけねーだろ」
空耳じゃなかったとしたら、
確かにそう聞こえた。
でもそのかすかな思いは、
バスの大きなエンジン音と、
無関心な乗客たちと、
ちょっと気になる僕の間で揺れ動き、
やがて霧散してしまった。
「気持ちはきちんと言葉にして伝えないと届かないよ」
って、それこそ言葉にして伝えたら良かったのだろうか。
余計なお世話に決まってるし、腕力もありそうな青年だったから諦めた。
僕は帰ったら春キャベツのパスタを作る。
誰でもよくない。
僕と、ついでに嫁の分も作る。